第三話「ジャンポールの幼馴染とニナの占い」

その頃ジャンポールはホテルの最上階にいた。

エレベーターを降りてしばらく廊下を歩くと、誰もが目を留めるような、

金色の薔薇の装飾や見事なダマスク模様の彫刻が施されている、深いマホガニー色のドアの前で止まった。

ドアには今にも動き出しそうな猫のモチーフで作られたドアノッカーが備え付けてあり、こちらをじっと見ているようだ。

ジャンポールは商品を載せた台車をドアの横にゆっくりと置き、

身なりを整え時計を見た。オーナーに届ける約束をした17時50分丁度に針が指し示したのを確認し、

コホンと声を整え、ドアノッカーに手を伸ばした。

ひんやりとした持ち手を掴んだその時、ガチャッと勢い良くドアが開いた。

ジャンポールはびっくりして後ろに下がると、

中からピシッと整った制服姿の従業員、ダニエルが後ろ姿のまま出てきた。

ダニエルは部屋に向かって丁寧に挨拶をして、くるりとこちらを向くと、

ジャンポールに気づき一瞬驚いた表情を浮かべ、

すぐにドアを自分の方へ引きながら、

「これは申し訳ございません。ジャンポール 様、ドアに当たりませんでしたか?」

と申し訳なさそうに聞いた。

ジャンポールは大袈裟に驚いた顔を作り、

肩をクイっとあげてピタッと止まるジェスチャーをした後笑顔になり、

「やあダニエル、大丈夫だよ。タイミングがあってしまったね。

それにしてもここで会うとは珍しいね。」

と答え、ダニエルが出てこられるようにさらに一歩下がった。

ダニエルはおどけて見せたジャンポールに安堵した表情を見せ、

「驚かせてしまい申し訳ございません。実はホテル創業以来、

初めてレンタル用の備品がなくなり、オーナーに報告をしておりました。」

と困った表情で答えると、ドアをゆっくりと閉め、

軽い身のこなしでひらりと横にあった台車を側に持ってきてくれた。

「ありがとうダニエル。君は本当に優しいね。」

と言うと、ダニエルはニコッと笑った。

ジャンポールは台車から荷物を持ち上げながら、

「さっきの話だけれど、盗まれてしまったのかい?猫の誘拐事件も起きているし、この平和なマルフェットも変わってしまったのかと思ってしまうよ。」

と言い、ため息をついた。

ダニエルは神妙な面持ちで

「どれも善意で貸し出しているものですから余計に悲しいのです。

その誘拐事件も当ホテルでございますし、胸も頭も痛めております。」

と嘆き、丁寧に台車を元の位置に戻すと、

「ノックは私が。」

と言い、代わりにドアノッカーを叩いた。

コンコン!と金属の高くて硬い音が響いた後、中から弾んだ声で

「ジャンポールかい?入って入って!」

という声がした。

ダニエルはドアを開けてどうぞと優雅にジェスチャーをして見送った。

「ありがとうダニエル。」

と言いながらジャンポールは中へ入った。

「やあ!来たね!ジャンポール!楽しみに待ってたよ。」

と言いながら、えんじ色のダブルスーツに深い青色の星空のネクタイ、

流れ星の形をしたタイピンがトレードマークの、縦にも横にも大きな男が両手を広げて、満面の笑みで待っていた。

大男は強い力でハグをした後、ジャンポールの持っている箱を待ち切れないという感じで受け取った。

ジャンポールは足早に箱を持って奥へ向かう大男を追いながら、

「やあフィリップ、久しぶりだね。沢山の注文ありがとう。

今年もサンタ役をやるのかい?」

と聞くと、フィリップは大きな机に大事そうにそっと箱を置くと、振り返ってにかっと笑った。

「もちろんやるよ!毎年の楽しみになりつつあるからね。

それにしても今回の出来も最高だねジャンポール!」

と絶賛しながら一つ一つぬいぐるみを手に取り始めた。

ジャンポールはハッと思い出し、

「そうだ、クリスマスだから特別にカードをリースにしてみたのだけれど、

どうだい?そしてそのことなんだけど…」

と言いかけると、フィリップは大きな声で

「これはいい!これだとカードもこちらで用意しなくてもいい訳だ!

ジャンポール !君は幼い頃から本当に賢いなぁ!」

と上機嫌に言い、再びぬいぐるみを鼻歌混じりに確認し始めた。

嬉しそうなフィリップをジャンポールが言いにくそうに見守っていると、

フィリップの手が止まり、

「あれ、カードが一つ足りないようだけど…」

と言って振り返った。

ジャンポールはすまなそうに

「申し訳ない、うちのおチビさんがここに来る途中で噛んでしまってね、

一つ破れてしまったんだよ。また明日にでも届けるけど、それで大丈夫かい?」

と言ってフィリップの表情を伺った。

思いがけないハプニングの告白に、フィリップは吹き出し、

「ははは!そうか、噂のプックちゃんは今やんちゃ盛りか!」と言いながら手を叩いて笑った。

ジャンポールはほっとした表情をしながら

「今はなんでも噛みたいようだよ」

と笑いながら言うと、フィリップはハッとした表情をして、

「あれ、今ここに来る途中と言ったかい?もしやここに来てるのかい!?」

と目をキラキラさせて聞くと

ジャンポールは笑顔で頷きながら、

「今下のカフェにニナといるよ。」

と答えた。フィリップは手をポンと叩き、

「よし!備品の補充の連絡を入れたらすぐに向かうよ!」

と言い、いそいそと電話をかけ始めた。

ジャンポールは商品の入った箱をフィリップが作業しやすいようにどけてやると、机に置かれたメモが見えた。

『紛失した備品』

・猫用トイレ1つ

・ペット用フード皿2つ

と几帳面な字で書いてあった。フィリップは電話をかけながら、ジャンポールに「先に行っててくれ」というジェスチャーをし、ジャンポールはそれに頷いて下を指差し、飲み物を飲む仕草をした後、手を軽くあげ「後でね」とサインを送り、フィリップが親指を立てて応えたのを確認し部屋を出た。

一階のカフェスペースでは午後6時を回ったばかりということもあり、

ディナー客が訪れはじめ、ますます賑やかさを増していた。

ニナはクロウディアさんから券を受け取り、再び鞄の中に入れた。

「もしかしたらと思って持ってきてたのに、私ったらすっかり忘れてたわ。

プックのおかげね♪」

と言いながら、鞄から木製の箱と布を取り出した。

クロウディアさんは不思議そうに箱を見つめている。

手際良く準備をするニナは、

「ちょっと動かしますね。」

と言い、テーブルの上のカップなどを移動し、水色の光沢のある布を広げた。

布には「場所」・「人物」・「原因」などの文字や、月や太陽の絵と共に複数の枠が書かれていた。

クロウディアさんがこの変わった布を不思議そうに見つめていると、

「最後に大事なカードを…」

と言いながら箱から年季の入ったカードを取り出し、

慣れた手つきでペラペラとめくり始めた。

よく見ると「上」や「下」、「近い」や「遠い」などのカードや、

「子供」や「大人」などの単語と絵が描かれた、一風変わったカードのようだ。

「わぁ!タロットカードとかじゃないのですね!」と思わずクロウディアさんが聞くと、

ニナは嬉しそうに、

「まあ!気づきました?実は何十年も前に私の祖母から貰ったオリジナルのカードなんですよ。」

と言いながらにこりと笑い、カードを分け始めた。

クロウディアさんはカードが手際よく分けられていく様子を見ながら、

「素敵です。受け継いだものなのですね。」

と返し、所々傷んだカードにテープで補修されたものがあることに気がついた。

ニナは分けた束を念入りにシャッフルしながら、

「ええ、このカード、実は占いのカードではないのです。祖母の祖母がある日突然、病気で言葉が喋れなくなってしまって、そんな時にコミュニケーションを取るために祖母自身が作ってあげたカードだと聞いています。」と説明した。

「それが今では占いのカードに…?なんだか凄いですね。」

と言い、クロウディアさんはまじまじとカードを見つめた。

「祖母の祖母はソフィアおばあちゃんというのですが、面倒見が良くて、

お人好しで、どんなトラブルも自ら関わってしまう性格で、

頼れるけど少しお節介な人だったみたいです。

探し物や悩み事も、少し話を聞いただけで解決しちゃうので、

魔女なのでは?と噂されてたみたいですよ」

といたずらっぽく微笑むと、

クロウディアさんもつられて思わず「ふふっ」と笑った。

ニナはシャッフルしたカードをそれぞれの枠に置き始めた。

クロウディアさんは並べられたカードの束を不思議そうに見つめながら

「さっき少し見ちゃったのですが、クローゼットやランプとか、

家具などのカードもあるのですね。」

と言うと、ニナは手持ちのカードを優しく最後の枠に置きながら、

「そうなのです。日常会話のほとんどを網羅しようとしたカードなので、

沢山種類があるのですが、占い用に祖母が厳選したものだけを受け継いでいます。」

と答えると、手帳の解説表のようなページを開いた。

クロウディアさんが興味津々でカードを見ていると、

ニナは手帳に挟んである『ソフィアおばあちゃん』の写真を取り出しながら、

「なんでも、私の父があまりにもうっかり屋さんで、

子供の頃から落とし物や失くし物が絶えなかったようで、困り果てた祖母はソフィアおばあちゃんなら、お空からでも教えてくれるはずと考えて、

このカードをタロットみたいに使ったことがきっかけのようです。あらゆる事を聞いていたみたいで、その度に本当に助けられて、

それから身内でのみ占ってたみたいです。」

とクスクス笑いながら写真をテーブルに置き、

指で優しくソフィアおばあちゃんの頬の部分に触れた。

クロウディアさんは

「その方がソフィアさんですか?笑顔が素敵な方ですね」

と写真を覗き込んだ。

「ありがとうございます。唯一残っている写真なんです。

会ったことはないのですが、

このカードのお陰でずっと会話ができているような感じがしています。」

と写真を見つめて言った。

「ニナさんの笑顔はソフィアさんに似ていますね。とても安心感があります。」

とクロウディアさんが言うと、

「まあ、そんな風に言ってくださるなんて…ありがとうございます。」

と言うと嬉しそうに笑みを浮かべ、写真をしばらく見つめた。

ニナは姿勢を正すと、改まった感じでクロウディアさんを見つめ、

「クロウディアさん、今から占っていきますが、

その前に大事なことを伝えておきますね。」

と言うとクロウディアさんも姿勢を正し、

「はい、お願いします。」

とニナを見つめた。

「今回は探し物の占いです。占いの中でも、探し物の占いは、

直接答えが出るわけではなくて、カードから沢山のヒントが出てきます。

そしてそれは占い直後から注目すべき、ドレちゃんに導くヒントになっています。」

と真剣な顔で言うと、クロウディアさんは

「はい。わかりました。ヒントをいただけるのですね。」

と少し緊張した表情で答え、両手を重ねるようにして膝の上に置き、

ふぅっと小さく呼吸を整えた。

「すみません、何故か緊張してしまって…」

と言うと突然「フゴゴッ」と隣で寝ているプックのいびきが聞こえ、

思わずニナと目を見合わせてクスッと笑った。

「プックちゃんって何だか分かってるようなタイミングで、

色々してる気がします!不思議な子ですよね。」

とクロウディアさんが言うと、

「ふふ、そうかもしれないですね。ねえプック、あなた分かってるの?」

とニナはプックを見ながら、いたずらっぽく笑った。

そんな問いかけにプックは薄目を開けて伸びをしたかと思うと、

すぐに目を閉じ、気持ちよさそうに寝に入った。ニナは寝相でくずれたマフラーを優しくかけ直し、テーブルに向き直った。

「では、始めましょうか。私の探し物の占いは、2、3日のうちに答えが出ることが多いのです。『クリスマスは一緒に過ごせる』というイメージを強く願ってくださいね!」

と言うと、

「はい!わかりました。強く、強く願います。」

とクロウディアさんは深く頷き、少し目を潤ませた。

ニナはカード全体を見渡したあと、鞄をゴソゴソしながら、

「クロウディアさん、ローズの香りは大丈夫ですか?」

と尋ねた。

クロウディアさんは少し唐突な質問に目をパチパチさせながら、

「え、はい!大丈夫です。」

と答えると、それを聞いたニナは鞄から綺麗な香水瓶とハンカチを取り出し、

香水をハンカチにシュッとかけ、写真のすぐ側に置いた。

すっかり寝ていたプックは、香りに気づき起き上がって

一生懸命クンクンしたが、眠気には勝てずもう一度寝に入った。

「わあ、いい香りですね。」

とクロウディアさんが言うと、

「実はこれが大事なおまじないなのです。

占いの合図にはソフィアおばあちゃんが大好きだった薔薇の香りが必要だと祖母が言っていました。本当に少量で良いので、少し香らせてくださいね。」

と言って置いたハンカチをぽんぽんっと手で触った。

「初めてのことだらけで、なんだか驚くばかりですが、

この香水…とても惹かれます。全く嫌味がなくて、本物の薔薇の香りみたいですね!」

と言い、香水瓶を見た。

「まあ!嬉しい!この香水はマルフェット通りにある友人のお店のオリジナルで、お気に入りなんです♪」

とニナが言うと、クロウディアさんは香水瓶を覗き込み、

「容器もアンティーク調で可愛いですし、国に帰る前に是非欲しいです!

あ、こんな時に私ったらごめんなさい。脱線してしまいました。」

と言って少し真剣な顔に戻った。

「ふふ、大丈夫ですよ。この香りのリラックス効果はすごいですよ♪気持ちが軽くなりますし、控えめなのに近くで嗅ぐとしっかり薔薇の香りがして、他の人に迷惑をかけずに、香りを楽しめるところが特に気に入っています。付けてみますか?」

と言うとニナはクロウディアさんに香水瓶を渡した。

クロウディアさんは香水瓶をぐるっと一回転させて見た後、

蓋を取り手首にシュッとかけた。

「本当に強くなくて、とても良い香り。癒されます。」

と言ってニナに香水瓶を返した。

「友人のお店は『ラナンキュラス』というのですが、他にも色々な香水がありますよ♪そして可愛い看板犬さんもいるんです!後でお店の地図を渡しますね。」

と言った後、にこにこしながら香水瓶をしまった。

クロウディアさんは

「ありがとうございます!」

と言ったあとにもう一度手首の香りを確かめた。

準備を終えたニナは、指差し確認をするかのように、

それぞれのカードの束を触り、何かを確認するように布を見渡して、

ハッとした様子で鞄の中を探し始めた。

しばらく探した後、ニナがクロウディアさんに何か尋ねようとしたその時、

「これかい?」

と急に声がして振り向くと、今朝の新聞の切り抜きを持ったジャンポールが立っていた。プックはジャンポールの声に飛び起きて、今にも飛びつきそうな勢いでぴょんぴょんと動き、嬉しそうにしている。

「まぁ!ジャンポール!びっくりしたわ!これよこれ!あなたにはいつも驚かされるわ!」

と言うと笑顔で切り抜きを受け取り、折り目のついたドレの写真を布の中央の一番目立つ枠に置いた。

「実はフィリップがプックを見に来るから、それを伝えたくて先に来たのだけれど、丁度良かったみたいだね。虫の知らせみたいなものかな。」

と少し得意げな表情をつくると、ピーピー言いながら興奮しているプックを抱き上げた。

クロウディアさんはこの夫婦の不思議なやりとりを目の当たりにし、

挨拶のタイミングを失っていた。

それに気がついたジャンポールはプックを抱きながら、

「ジャンポール・ブランと言います。ニナの夫です。クロウディアさんですね。今は本当にお辛いと思います。早くみつかるといいのですが」

と丁寧に挨拶をした。

「ジャンポールさん、初めまして。ドレの写真、切り抜いて持ってくださってるなんて…ありがとうございます!」

と胸に手を当てて感動した様子で言った。

ジャンポールは顔をプックに舐められながら、

「いやいや、これはもし見かけたら、すぐに分かるようにと思って、ポケットに入れていたのです。ニナ、何でも手伝ってさしあげるんだよ。」

と言うと、少し照れながらプックを優しくペットベッドに戻した。

「私は友人が来るまでに荷物を置いてきますので、これで。プック、すぐ戻るからお利口にして待つんだよ。」

と言うと、空の箱が乗った台車を押しながらエントランスの方へ向かっていった。

クロウディアさんはジャンポールが見えなくなるまで優しい眼差しで見送っていると、

「では、やりましょうか!」

とニナが明るい声で言った。

クロウディアさんは

「お願いします。」と真剣な顔つきになり、座り直した。

ニナは折り目のついたドレの写真を綺麗に伸ばし、

「ドレちゃんの手を握る想像をして、写真に手を置いてもらっても良いですか?」

と聞いた。

「はい。」と言うと、クロウディアさんは少し緊張しながら、写真にそっと手を置いた。

プックはすっかり目が覚めたのか、クロウディアさんの方を向いて首を傾げたり覗き込んだりしている。

ニナがソフィアおばあちゃんの写真に何か問いかけたように呟いた後、

「はい、もう大丈夫です。」

と言うと、クロウディアさんは手を引き、視線を送り続けているプックを撫でた。

必死に堪えていた感情が込み上げたようで、クロウディアさんの目が潤んでいた。

プックは慰めるかのように、クロウディアさんの手を必死に舐めた。

ニナはカードにしばらく手を置いた後、

「ソフィアおばあちゃん。お願いします。」

と言うと、それぞれの枠に置いてあるカードの山から、2枚ずつカードをめくった。

クロウディアさんはプックを抱っこし、息を飲んで見つめた。

・場所=近い、狭い

・人物=子供、男性

・感情=優しい、悲しい

・原因=習慣、好奇心

ニナは出たカードを見渡し、

「最後のヒントは三つ教えてください。」というとヒントの枠の中にある3つのカードの山から1枚ずつ開いて置いた。

・ヒント=日曜日、パーティー、喪失

ニナはそれぞれでた結果を手帳に書き移している。

クロウディアさんはニナの顔を覗き込み、

「どうでしょうか?」

とすがるように聞いた。ニナは解説表を見ながら

「クロウディアさん、おばあちゃん一生懸命教えてくれようとしてるみたいです。かなり具体的なカードが出ています。ドレちゃんは近くにいるみたいです。そして、どうやら失踪には小さい子が関わっているみたいです。」

と説明しながら結果を手帳に書き始めた。

「ドレは近くにいるのですか!?どこに行けば会えますか?その小さい子が知ってるのでしょうか!?」

と動揺するクロウディアさんにニナは落ち着いた声で、

「ヒントからすると、窓はもしかしたらドレちゃん、クロウディアさんの仰る通り、自分で出たのかもしれないですね。そして小さい子が関わっていて、ドレちゃんを知ってるかもしれないです」

と続けて言った。

「窓はやっぱりそうですよね。その子供さんを見つけなきゃですね。」

と言うとため息をついた。

ニナは最後の「未来/結果」という枠のカードをクロウディアさんに指差し、

「クロウディアさんが開けてもらえますか?」

と言った。

クロウディアさんは「…はい。わかりました。めくれば良いのですよね?」

といいながら、躊躇していると、

「大丈夫ですよ。」

とニナが目を見つめて言うと、クロウディアさんは頷いて思い切ってめくった。

・未来/結果=星

「ああやっぱり!良かった!」

とニナが胸に手を当てて言うと、クロウディアさんはプックをギュッと抱いてニナを覗き込んだ。

「クロウディアさん!星が出るのはいい兆しなのです!

星が出たら希望、良い方向に行くというお墨付きなのです!」

と弾んだ声で言ったニナに、クロウディアさんは

「そうなのですね!そうだと良いです!」

と言いながら再びプックをギュッと抱きしめた。

ニナは手帳に占いの結果のキーワードを2枚同じように書き写し、

そのうちの一枚を手帳から切り取ってクロウディアさんに渡した。

「これをいつでも持っててくださいね。ここはマルフェットのお里、不思議な出来事が当然のように起きる場所です。クロウディアさん、魔法のように色々な出来事が起きるかも知れません。たった今からこのヒントを気にかけてくださいね。」

と念を押した。

「はい。ありがとうございます。そうですよね。ここはあの絵本で有名な言い伝えの場所ですものね。不思議なこと、おきてほしいです!ドレに早く会いたいです!!気をつけて見逃さないようにします!」

と答えてメモをじっと確認したあと、

プックを膝に置いたままカバンの中からお財布を取り出し、

大事そうに小さく畳み、メモをお財布の中にしまった。

ニナは手帳に地図を書きながら冷静な声で、

「究極な話、占いを信じられなくても大丈夫なのです。きっともう自動的に運命は動き出しています。ドレちゃんと会えるイメージをして、希望を持つことが大事ですからね!必ず会えます。大丈夫。ドレちゃんも会いたがってます。絆を信じてくださいね。」

と言い、笑顔でコスメショップの地図が書かれたメモを渡した。

「はい!ありがとうございます!なんだか今、根拠の無い自信みたいなもので満たされています。頑張れそうです!諦めないで探します!」

と言ってメモをまたお財布に入れようとしたその時、

膝の上のプックがメモにパクッと噛みつこうとした。

クロウディアさんとニナがプックに気を取られていると、

「はーっはっは!」

と豪快な笑い声が聞こえてきた。声のした方向を見ると、

ホテルのオーナーのフィリップが目を細めて満面の笑みで

プックの方に手を差し伸べながら向かってきていた。